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(1)むちうち症とは 

自動車の追突、衝突等の交通事故の怪我で最も頻度の高いのがいわゆる”むちうち症”(「外傷性頸部症候群」あるいは「頸椎ねんざ」の俗称)です。首から肩の痛みや頭痛、めまい、吐き気など多彩な症状が生じます。

(2)分類 

むちうち症を大まかに4つのタイプ分類します。

①頸椎ねんざ型

首の後ろ側の筋肉や靭帯などの軟部組織の損傷によりむちうちと診断された症状の約7割が頚椎ねんざ型に該当します。首の痛み、頚椎の可動域制限、首や背中のこり、頭痛などの症状が中心となります。事故の外力の大きさと症状は必ずしも比例せず、軽い事故だからすぐに完治するとは限りません。

②バレ・リュー型

首の交感神経・副交感神経の異常により、過緊張(交感神経の過剰な優位)等によって生じる自律神経の機能障害(失調)が主体な症状です。めまい、耳鳴り、頭痛、記憶障害、倦怠感、吐き気等の症状が中心となります。事故の被害による心因的ストレスなどの要因も関与します。

③神経根症型

脊髄からの神経の枝である「神経根」の障害による症状が主体です。主に片側の上肢の疼痛、感覚障害、しびれ、脱力、運動麻痺などの症状が見られます。MRI検査により、既存の頚椎症(首の加齢現象)や椎間板ヘルニアなどの関連が指摘されることがあります。もともと無症状だったものが事故を誘引として発症する場合があります。

④脳脊髄液減少症型

事故の影響で脳の周囲を満たしている脳髄液が漏れることで髄液圧が下がることによって、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠などさまざまな症状を引き起こす病態をしめします。この病態については医学的にも様々な対立する見解があり、まだまだ不明な点が多く存在します。

(3)症状 

むちうちによって生じる代表的な症状は次の通りです。

​特に初期においては症状は医学的に説明しづらいものも多く存在します。

  • 首・後頭部・肩・腕の痛み

  • 首・肩・背中の懲り、重さ、灼熱感など

  • 頚椎、肩の可動域制限

  • めまいや目のかすみ、眼精疲労

  • 嘔気

  • 上肢の脱力、握力低下

  • 上肢の痺れやだるさ

自動車事故に遭った直後は、急なことで動揺していることもあり、痛みを感じにくいこともあります。時間が経つにつれて症状がでてくることも多いですので、直後に症状がなくても安心せず、症状が出てきたら早めに医療機関を受診されることをお勧めします。(症状が無くてもとりあえず病院を受診することを勧める意見もありますが、症状全く無い場合には予見や診断書の作成が難しいため、数日様子を見ながら少しでも違和感が出てきたら受診でいいと思います。あまり間が空きすぎると事故との関連性が疑われることになりますのでできれば1週間以内が良いかと思います。)

(4)治療 

事故後に症状が出てきたらまずは病院を受診しましょう。医師が行う治療の手順は次のとおりです。

  • 問診…交通事故の場所や状況、症状の経過、生活やお仕事への支障状況などをお聞きします。

  • 検査…触診、理学検査などによって損傷部位の状況を把握。X線検査を実施します。必要に応じてMRI検査を予定します。(X線やMRI検査で痛みの原因が判明するわけではなく、むしろ画像診断としては異常がないことがほとんどです。しかし、画像的な異常がないことを確認しておくことが安心して治療を行う為には必要ですし、また後遺症が残った時に元々原因となる持病が無いことの証明として重要です。)

  • 治療方針の決定…時期や症状に合わせての治療法についてご説明いたします。物理療法や運動療法、薬物治療(処方)、注射などを時期や症状に応じて実施していきます。

  • 人身事故の証明のために警察に提出する診断書を作成いたします。

 

むちうち症に対する具体的な治療法をご紹介します。残念ながらむちうち症を即時に治す治療法は存在しません。一時的に治ったように感じても間を置くとまた痛くなったりしてすっきりしません。治癒するためには、個人差はありますがある程度の時間が必要となります。治癒するまでの期間の症状を少しでも楽にするため以下のような治療方法を用いて苦痛を取り除いて参ります。

・理学療法(リハビリテーション)

交通事故治療の中心となります。マイクロウェーブ、低周波、超音波治療器、電気鍼等により患部を癒やすことで改善を促す「物理療法」と、筋肉の緊張をほぐすリラクゼーション手技や体を動かすことで日常生活の質の改善を目指す「運動療法」とを合わせてリハビリテーションを行っていきます。

・薬物療法 

消炎鎮痛剤(痛み止め)や筋緊張緩和剤、ビタミン製剤、疼痛治療剤などの内服や、湿布剤などの外用塗布剤などを用います。特に事故後早期の症状が強い時期に必要となることが多くあります。

・トリガーポイント注射、筋膜リリース 

筋緊張の強い箇所や圧痛点(トリガーポイント)に注射を打つことで痛みや筋肉の過緊張をとり、改善を図ります。また筋膜の癒着部位を注射で剥がす筋膜リリースが有効な場合があります。

​・星状神経節ブロック照射(レーザー)

星状神経節への近傍照射は、ストレス等で緊張している交感神経を正常な状態に戻し、血行を改善することにより効果を発揮します。どのような患者にも施行でき、 無痛かつ無侵襲であることに加えて、実施が容易な治療法です。

 

(5)治療期間

事故の損傷程度と治療に要する期間は必ずしも比例しません。日によって良かったり悪かったり波があったり、天気や気圧の影響を受けやすかったり、重だるさがしつこく残るのも特徴です。軽い事故だからと軽視せずに、しっかり治るまで治療をつづけましょう。個人差は大きいですが治療期間は3ヶ月程度、症状によっては6ヶ月以上かかる場合もあります。安静にしたほうが早く治るわけではないことが分かっていますので、しんどいですが仕事や生活様式はなるべく早期に事故前と同じように過ごすことで患者さんの社会的損失を最小限に抑えることが望ましいと思われます。

保険会社が治療の打ち切りを申し出てきたら.....

一定期間の治療を経ても、症状が残存した場合、後遺障害認定に該当する場合があります。症状固定を判断するのは保険会社でなく医師の診断によりますが、交通​事故の当初より症状固定時期を予測することは困難です。保険会社による不当な治療打ち切りを防ぐためにも、事故後早期に弁護士に相談することをおすすめいたします。(ご自身の損害賠償保険で弁護士特約に入っていれば実質的な負担金はかかりません)。交通事故専門の弁護士をご紹介いたしますので、お気軽にご相談下さい。

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